“東京難民(上)・(下)(光文社文庫)” by 福澤徹三

東京難民(上) (光文社文庫) 東京難民(下) (光文社文庫)


お気楽な主人公には嫌悪感さえ覚える、また下巻は手抜きとしか言いようがない

読めば読むほど気が滅入ってくる内容だが、上巻は割とテンポよく話が展開するためあっという間に読み終えた。ただ、下巻になると苛立たしさを感じるようになってきた。 冒頭にシャッター商店街の定食屋が何の前触れもなく閉店していたというところから始まるのだが、このような突然のことが主人公にも起こってしまう。実家の両親が失踪し気ままな学生生活からフリーター、さらにはホームレスになってしまうのだ。当初お気楽に考えていたためかバイトもうまくいかず、恋人も友人にも不義理をして別れてしまう。ホストや日雇いをする羽目になるところで、下巻の1/3になったのだが、中国マフィアからの逃亡や予知能力のある浮浪者の登場で嫌気が差し、そこが限界で読むのを止めた。作者としてはどうやって話を終わらせようかと苦心したのかもしれないが、手抜きと言われても仕方のない出来である。
全体を通して、主人公のお気楽さ、危機意識のなさ、ルーズさには嫌悪感さえ感じた。

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内容(「BOOK」データベースより)
時枝修は、東京郊外にある私立大学の三年生。夏休み明けにクラス担任から告げられたのは、学費未納で除籍になるという寝耳に水の事実だった。北九州の実家では、借金を抱えた両親が失踪。貯金はないに等しい。アルバイトを転々とする中、家賃滞納で住居も追い出されてしまう。追いつめられる修。だが、それはまだ、底なしの貧困と孤独への入口に過ぎなかった―。

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