“FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン” by 広瀬隆(朝日新書)

FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン (朝日新書)



福島原発震災の原因は津波ではなく地震多発国に建設したことだ

著者は昨年「原子炉時限爆弾」(ダイヤモンド社)で、特に浜岡原発の危険性を訴えていた。今回の原発震災は福島第一原発で発生してしまったが、日本の原発の安全基準のいい加減さや耐震性・安全性の不完全さを露呈することとなった。これをきっかけに、多くの日本人が原発の危険性を改めて認識したはずだ。私自身電力をふんだんに使う生活に慣れすぎて、原発そのものにいかに無関心だったかを痛感し反省している。第2、第3の原発震災を絶対に起こさないためにも、脱原発の流れを盛り上げて実現する必要がある。
本書で力を入れて書かれているのは、日本が地震多発地域にあるということ、そして歴史的に見て大地震は周期的に発生しており、今現在その発生周期にかかっているということだ。また、福島原発震災の原因は津波であるかのような論調が見られるが、そうではなく「地震多発国に原発を建設すること自体が間違っている」のだ。
しかし、このようなリスクを無視するかのごとく、原発を推進する電力・官僚・学者・企業がいることも忘れてはならない。原発は「地球温暖化対策の切り札」で「クリーンで安価なエネルギー」というのはは大嘘だということを正しく認識することが必要である。公表されている原発のCO2排出量や発電コストは発電時に必要な最小限の値であろう。しかし、燃料棒の製造や使用済み燃料の処理など発電時以外に発生するCO2や費用を含めれば、莫大な値になることは容易に想像できる。
そもそも使用済み核燃料の処理ができないという事実が見過ごされていると思われる。著者は六ヶ所村の再処理工場は今後もまともな運転は見込めないと断言している。人間の手で最後まで安全に処理できないものは作らないのが筋ではないのかと感じる。

エネルギー・経済統計要覧に基づけば、日本全体では原発がまったく稼働しなくても火力と水力で十分賄えることがわかっている。さらに、1997年の電気事業審議会の調査によれば、IPP(Independent Power Producer=独立系卸電力事業者)と言われる鉄鋼、機械、化学メーカーが保有する発電能力は最低でも2135万kW、最大では5200万kWに達するということだ。発電と送電の分離による電力自由化を実現する必要がある。

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内容紹介
福島第一原発の事故が日本全体を恐怖に陥れている。放射能災害が起これば一大事だが、単に「福島」にとどまる話ではない。地震多発国の日本に原発が54基ある。いつ起こるかわからない地震に備えて、運転を即、止めよと警告する。
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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
福島第一原発の惨状は目を覆わんばかりだ。原発震災を招いた原因は何なのか。「次」を防ぐ策はあるのか。「揺れも津波も想定外」とする東電幹部や識者たち。しかし、時がたつにつれ「事故は人災」との指摘が強まっている。折しも列島は「地震激動期」に突入した。日本を救うために、原発震災の危険性をいち早く指摘していた著者が、「全原発を即、止めよ」と緊急警告する。
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【目次】(「BOOK」データベースより)
原発震災がまた襲って来る/第1部 福島第一原発事故の「真相」(津波に暴かれた人災/東電・メディアに隠された真実/放射能との長期戦)/第2部 原発震災、ここで阻止せよ(巨大地震の激動期に入った日本/「浜岡原発」破局の恐怖/活断層におびえる「原発列島」)/完全崩壊した日本の原子力政策

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