
少し前に映画化されて話題になっていたので読んでみた。
副題の「点の記」とは何かが分からず気になっていたのだが、「点の記」とは、地図作成のための基準となる三角点の設置記録資料で、一等三角点~三等三角点の場合に作成されるものということだ。国土地理院には永久保存資料として保存されている大変貴重なものである。
この本の主人公柴崎芳太郎氏は、国土地理院の前身である当時の参謀本部陸地測量部の測量手として、苦労の末劔岳登頂に成功したが、四等三角点しかしか設置できなかったため、公式な「点の記」は作成されなかった。新田次郎は、柴崎芳太郎氏の功績を残すため、この小説を「劔岳点の記」と命名し、公式「点の記」に代わる資料としようと考えたのではないかと思われる。
測量手の柴崎芳太郎、測夫の木山竹吉、生田信、案内人の宇治長次郎など、それぞれが自分の任務・役割を果たすために一致協力する様がよくわかる。また、柴崎の奥さんの葉津よさんの健気なかわいらしさも行間から伝わってくる。
前人未踏と言われていた劔岳山頂には、錫杖の頭と剣が残されていて、奈良時代の修験者が登頂し残していたのではないかということだが、この事実にも驚かされる。
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誰かが行かねば、道はできない。日本人の心がここにある。明治40年、前人未到の劒岳に三角点を設置すべく初登頂に挑んだ男たちを描いた名作を、映画公開に先がけて読みやすくした〈新版〉
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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
日露戦争直後、前人未踏といわれ、また、決して登ってはいけない山と恐れられた北アルプス・劔岳。測量官・柴崎芳太郎は、山頂への三角点埋設の至上命令を受け、地元の案内人・長次郎とともに、器材の運搬、悪天候、地元の反感など、さまざまな困難と闘いながら、その頂に挑戦する。そして、設立間もない日本山岳会隊の影が─。我が国最高の撮影監督といわれる木村大作が自らメガホンをとった、畢生の映画化作品の原作にして、新田次郎山岳小説の白眉を、読みやすくした新版。

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