内容は執筆者により玉石混淆だが、日本のマスメディアの責任を指摘している
本書は各分野の8人の識者による日本の現状に対する考察と提言をまとめたものということだったので、非常に興味を持ち期待して購入した。しかし、元々は2009/6にゴマブックスから発行された「日本一早い平成史」を加筆修正したものらしく、必ずしも最新情報に基づいていないように思われた。
はじめにも書かれているように今の日本は閉塞感に包まれているのは事実だ。政治、経済、景気、雇用環境、どれ一つ明るいモノはない。今の課題は何か、それを解決するにはどう考えたらいいのか、そして「これからのあるべき姿」は何かを専門家に語ってもらうというコンセプトの本だが、各執筆者の視点や書きぶりが異なり、うまくまとめ切れていないように思う。この点では玉石混淆と言える(ほとんど玉だが、残念ながら石もある)。
また、「日本の多くのマスメディアは日本が抱えている本質的な問題に的確に向き合わずに、ただ不安を煽るような情報だけを発信し続けてきた。その罪と責任は大きい。」と指摘しているが、この事実をどれだけの国民が知っているのか、さらにどれだけのメディアがその罪を自覚しているのかを思うと気が沈む思いがする。
以下それぞれについて
・政治(有馬晴海氏。この方の名前の記憶がない、識者といえるのか?)
小選挙区制ではなく、複数候補が当選する中選挙区制が望ましく、これにより新しい人材が政治参加する機会が増えると述べている。指摘内容はその通りだろうが「木を見て森を見ず」の典型である。
・経済(小幡績氏。
バブル崩壊後我慢していれば今までと同じようにまた景気がよくなると考えて何もしてこなかったことが最も問題である。少子高齢化社会になることは分かっていたのに、過去の高度成長期の経済モデルを変えなかった。
・雇用(三浦展)
・教育(和田秀樹)
跋扈する子供可哀そう論
私は和田秀樹という人はやたら教育関係や自己啓発関係の本を出すので、なんとなく教育評論家の中谷彰宏かと思っていたのですが、この本を読む限りではどうもそうではないようです。和田秀樹はこの本で日本の子供の学力の低下は「ゆとり教育」が導入される前から始まっていて、公教育の質の低下や大学のAO入試などがさらに子供の学力の低下に拍車をかけていると言っています。世襲制が教育、学習意欲を殺いでいるという話も面白いですね。東大卒よりも世襲の方が偉く、尊敬を集め、大人はそんな世襲政治家に投票すると、子供は東大を目指さなくなり全体の学力も低下していくというのは大袈裟なようですが現実の話です。安倍晋三元総理や麻生太郎総理がいい例ですね。今回の選挙の注目選挙区の1つ神奈川11区はそのいい例ですね。自民党は世襲で関東学院卒の小泉進次郎と民主党の東大卒の横粂勝仁との争いの結末は如何に。
・女性(坂東眞理子)
具体的に何を言いたいのかが全く分からない。精神論として
・宗教(島田裕己)
・環境(武田邦彦)
偽善エコロジーなどの著書でエコには批判的だが、その根拠にも触れている。過去において実際に起こった「リアルな環境破壊」に対して「創造型環境破壊」という言葉を使っているが「創造型」と言うより「予想型」「想像型」
・報道(森達也)
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内容(「BOOK」データベースより)
日本の多くのマスメディアは日本が抱えている本質的な問題に的確に向き合わずに、ただ不安を煽るような情報だけを発信し続けてきた。その罪と責任は大きい。だからこそ、「今、何が課題で、それを解決させるにはどう考えていけばいいのか」を、冷静に考察していきたい。
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平成になって早20年以上が経過した今、日本は明日への希望を見出せない若者や生活不安をかかえる中高年であふれている。本書は、経済・教育・雇用・宗教・女性・報道・環境・政治の識者がそれぞれの専門的視点から今日の社会状況を分析した一冊。
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【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 政治─迷走する政治に活路を見出すために
第2章 経済─経済の立て直しに秘策はあるのか?
第3章 雇用・暮らし─非正規雇用の増加から考える、今後のあるべき雇用形態
第4章 教育─同情しないエリートと努力を知らない非エリート
第5章 女性─ますます加速する女性の社会進出
第6章 宗教─「宗教バブル」が起こった本当の原因
第7章 環境─創造型環境破壊がはびこる、ウソだらけの「平成」エコロジー
第8章 報道─進化し続けるメディアと僕らが生き延びるためのメディア・リテラシー
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