著者は現職のスウェーデン公使で、2年間の在住経験をもとに「スウェーデン的生き方」とその元となる「スウェーデンの本質」について考察している。スウェーデンの本質は「自立した強い個人」「規則に基づく組織力」「透明性」「連帯」であり、この本質に基づき「男女平等社会」「手厚い社会保障」「独特の競争力強化のメカニズム」「自立意識の強い外交」などのスウェーデン的生き方が可能になるのだと言う。
市場機能重視のアメリカ型「小さな政府」の対極にあるスウェーデン型「大きな政府」の中身について説明し、小泉政権が押し進めたアメリカ型「小さな政府」に行き詰まりが生じている今の日本が、今後どうすべきかについての問いを投げかけている。
本書を読んで強く感じたのは、表面的には日本人とスウェーデン人は似ているが、本質的なところではかなりの違いがあるということだ。スウェーデン人の国民性は、真面目で勤勉、能率的で決まりをよく守り内気だという。一見日本人とよく似ているようだが、「自立した強い個人」という本質は大きく異なっている。スウェーデンの高齢者の子供との同居率4%、専業主婦率2%に対して、日本では高齢者の子供との同居率44%、専業主婦率28%である。この数値の違いがよくこれを表している。
「規則に基づく」という点も異なるところだろう。日本には本音と建て前があり、規則というよりは多数の意見やその場の雰囲気に従ってしまうところがあるが、スウェーデンでは律儀に法律・規則・ルールは守るという。著者はその顕著な例として、道路清掃のため夜間一時的に路上駐車が禁止となることがあり、深夜と早朝に車を移動させなければならないが、そのルールがきちんと守られていることを挙げている。労動組合の組織率の高さ、同一労働同一賃金が実現されていることは「組織力」がきちんとしている証拠だ。「透明性」に関しては、公平性を保つ仕組みが確立されており、さらにやる気を出すためのインセンティブを供与する仕組みと一体になって社会システムが成り立っている。また、「連帯」という概念は現在の日本には見られないものではないだろうか。農耕民族として他人との調和を尊ぶ日本人と狩猟民族として個人一人一人が強い自立心を持って責任を果たすことが求められるスウェーデンの民族の本質の違いを感じた。
また、個人個人もブレないが、国としても2世紀に亘って戦争をしていない、中立政策を取っているなど筋が一本通っているところも素晴らしい。
タイトルにもなっている「日本はスウェーデンになるべきか」だが、本質が異なるので全く同じ形、仕組みにはならないかも知れないが、日本がスウェーデンから学ぶべき点は非常に多いと感じた。
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内容(「BOOK」データベースより)
リーマン・ショックは市場機能重視の「小さな政府」に暗い影を落とし、深刻化したギリシャ危機は「大きな政府」の問題点を露呈した。では、日本はどうするのか?万能薬とはなりえないが、一つの答えが「スウェーデン・モデル」である。同じ大きな政府の中でも、この国の財政は健全で、「世界トップクラスの所得・国際競争力」を誇り、年金・医療・雇用・税制にも個性的な政策が並ぶ。今、決定的に重要なのは、日本との立場の違いを明確にした上で、スウェーデンという国を深く多面的に理解することなのだ。
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