“自由をつくる自在に生きる” by 森博嗣(集英社新書)

自由をつくる自在に生きる (集英社新書 520C)

著者は建築分野の元大学助教授で「スカイ・クロラ」シリーズなどの作家でもある。奥さんはささきすばるさんというイラストレータらしいが、お二人の名前は知らなかった。この本は、少し前に店頭で見かけ購入したものの読みそびれていたものだ。著者がまえがきにも書いているように「説教くさい、胡散臭い」というイメージを持って、読むのをためらっていたような気がする。
まえがきで、昔のように自由がなかった時代に比べて今の日本は「自由」だが錆びついていると言う。また、この本を読んでも結論は得られず、簡単に自由は得られないことがわかるだけだがそれだけでも価値があると言う。
これはまさにその通りと思う。「自由」という概念が人それぞれで違うだろうし、同じ人でも年とともに変わっていくと思われるからだ。生きていく上で、人は様々な支配(制約)を受けているが、その支配を支配と感じることができなければ、その人は「その範囲内では自由である」ということになる。
現在の日本には、封建社会や軍国主義のような目に見える支配はなくなったが、巧妙な安心の皮をがぶった密かな緩やかな支配、富を集めようとする支配は続いている。例えば、スポンサーの利益になる(商品が売れる)ようなマスコミやメディアの報道により煽動・洗脳されるのも支配、○○式や△△会と名が付くものに半強制的に参加させようとするのも支配、明るいことが良いことで暗いのは悪いと決められるのも支配、というようなものである。
いろいろな支配から抜け出す、乗り越えることが自由になることであって、達成感を得たときの満足感が自由になったと感じるということだ。支配の存在を認識するためには考えることが必要で、その支配から逃れて自由になるためには、さらに考えることが必要である。
著者の主張は、「自由」とは支配から解放され、自在・思うがままになることである。つまり、自在になるためには、まず「支配」の存在に気づくことが必要である。その支配から開放されるためには、乗り越えるための能力を身につける必要があり、当人の努力が必要であるということだ。能力や努力には限界があり、永遠に「完全な自由」は達成できないと思われる。しかし、自由と不自由の境界は人それぞれだが、自分なりに自由と思える領域を広げていきたいと考えさせられた。

・自由とは、英語では制約を受けないという意味。日本語では自在に思うがままに、暇な、する事がないという意味。
・思考による欲求と肉体的欲求(食べる寝る)がある。

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内容(「BOOK」データベースより)
自由とは何だろうか。それは、単に義務がない状態のことではない。何でもしてよいと放り出された状況のことでもない。自分の思いどおりになること―これが「自由」なのだ。当たり前に思えるかもしれないが、このことの深い意味を知る人は少ない。しかし、これに気づくことが、人生をよりよく生きるポイントなのである。真の意味での自由を知り、自在に生きる。その秘訣について、人気作家がわかりやすく論じる。

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