真実(原発のウソ)を伝えることの難しさと大切さを考えさせられる
著者は原子力工学の専門家だが、国策原発推進に反対し続けてきた。そのため出世の道は閉ざされ未だに助教のままだ。著者が所属する京都大学原子炉実験所には同じような反原発の研究者が集まっており地名にちなんで「熊取六人衆」と呼ばれていた。
福島原発事故後もマスゴミ(大手新聞・テレビ)は、反原発の意見を無視し続けてきたが、最近さすがに無視できなくなって報道されるようになり、一般の国民にも「原発のウソ」という真実が伝わるようになってきた。
著者の主張は、まえがきに集約されている。即ち、原子力のメリットはたかが電気を起こすこと、そんなものより人間の命や子供たちの将来の方が大事だということ、メリットよりリスクの方がずっと大きいということ、原子力以外にエネルギーを得る選択肢をたくさん持っていること、起きてしまった過去は変えられないが未来は変えられること、である。
事故後、政府・官僚・御用学者からは、偽善的楽観論、偽善的良い子発言が続けられたが、事態は非常に深刻であることが指摘されている。最近の報道ではすでに「メルトダウン」は過ぎて「メルトスルー」を起こしていると指摘している。
また、原発推進の原動力となったのは化石燃料の枯渇だが、原子力の燃料であるウランの方が先に枯渇するということだ。この対策として核燃料サイクル計画があるが、敦賀市のもんじゅや六ヶ所村の再処理工場の稼働は絶望的な状況である。使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出した後の高レベル放射性廃棄物の管理は100万年、低レベル放射性廃棄物でさえ300年間管理が必要だ。放射性廃棄物の無害化処理技術は確立していないため、後世に負の遺産を先送りしていることになる。
今回の原発事故についての著者の指摘をまとめると、
政府と東電が生データをすべて公開していないことを強く批判している
専門家による検証ができず、間違った情報が伝えられ、何度も訂正されたりしておりデータの信頼性がない
起きてしまったことは元に戻せない、従ってそれを受け入れるしかない。
チェルノブイリ原発事故と似ており、福島の将来を予測する助けとなる。
4月現在で放出された物質はチェルノブイリの1/10だが今後どうなるかはわからない。
このような現実をきちんと認識した上で、汚染された食物は放射線に鈍感な高齢者が食べ、子供や妊婦には安全なものを食べさせよう。
汚染された農地の再生も難しいと予測しているセシウム137の半減期は30年、この間農地を放置すれば再生は難しいだろう。
放射能の墓場を作るしかない、将来にわたって無人地帯にせざるを得ない。
負の遺産を残さないため原発を止めるしかない。
原発を止めたとしても、現有の火力発電所の稼働率を48%から70%に上げれば電力不足にはならない。
そして、もっとも大切なことは「エネルギー消費を抑えること」である。
原子力発電とは、ただお湯を沸かして蒸気タービンで発電するだけの機械
機械は必ず故障し人間は必ず失敗するミスをする
発電には1/3しか利用できず2/3は海水を7℃上昇させて暖めている
その流量は70ton/secという量だ
CO2よりもっと直接的な方法で地球を暖めている
発電時にはCO2発生しないが燃料棒製造や放射性廃棄物の処理にはCO2が発生し、エネルギーやコストがかかる
日本の電力料金が世界一高いのは、電力会社が資産を増やせば増やすほど儲かるしくみが、法律で担保されているからであり、そのため原発を造っている
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内容紹介
危険性を訴え続けて40年
“不屈の研究者”が警告する原発の恐怖
“安全な被曝量”は存在しない! 原発を止めても電力は足りる!
いま最も信頼されている原子力研究者の、3.11事故後初の著書
著者の小出裕章氏は、かつて原子力に夢を持って研究者となることを志した。
しかし、原子力を学ぶうちにその危険性を知り、考え方を180度変えることになる。
それ以降40年間、原子力礼賛の世の中で”異端”の扱いを受けながらもその危険性を訴え続けてきた。
そんな小出氏が恐れていたことが現実となったのが、2011年3月11日に起きた福島第一原発事故だった。
原発は今後どうなる?
放射能から身を守るにはどうすればいい?
どのくらいの「被曝」ならば安全?
原発を止めて電力は足りるの?
など、原子力に関するさまざまな疑問に”いま最も信頼されている研究者”がわかりやすく答える。
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内容(「BOOK」データベースより)
“安全な被曝量”は存在しない!原発を全部止めても電力は足りる、福島第一は今後どうなるのか?危険性を訴えて続けて40年”不屈の研究者”が警告する原発の恐怖。
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著者について
小出 裕章
1949年東京生まれ。京都大学原子炉実験所助教。原子力の平和利用を志し、1968年に東北大学工学部原子核工学科に入学。
原子力を学ぶことでその危険性に気づき、伊方原発裁判、人形峠のウラン残土問題、JCO臨界事故などで、
放射線被害を受ける住民の側に立って活動。原子力の専門家としての立場から、その危険性を訴え続けている。
専門は放射線計測、原子力安全。著書に『隠される原子力・核の真実原子力の専門家が原発に反対するわけ』(創史社)
『放射能汚染の現実を超えて』(河出書房新社)など。
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