“成熟ニッポン、もう経済成長はいらない それでも豊かになれる新しい生き方” by 橘木俊詔、浜矩子(朝日新書)

成熟ニッポン、そんなに成長して何になる

「せまい日本そんなに急いでどこに行く」の書き出しから始まる本書は、言わば「成熟ニッポン、そんなに成長して何になる」についての対談録だ。

本書の主旨は、日本はこれ以上生活水準をあげる必要はなく、優雅なる老衰国(大人の生き方)のモデルを示すべきだということだ。
この主旨には大いに賛同するが、現に顕在している雇用の空洞化や格差拡大の問題は早急に解決すべき課題である。

以下は要点のまとめ。
・かつては、経済成長によりキャッシュを稼ぐことが必須だったが、今の日本は潤沢なストック(社会インフラ、貯蓄など)が整った成熟債権大国になっている。成熟段階を迎えているのに、いまだに成長戦略しかたてられない、成長しないと不安になるというミスマッチ状態が問題である。
・昔の日本は1億総中流と言われるほど格差が小さく、普通の一般のレベルが非常に高い社会だったが、アメリカ化によって格差社会になってきた。また、有縁社会(血縁地縁社縁)から無縁社会に移りつつある。
・個人主義の台頭は社会的成熟度の高まりという側面もあるが、社会保障も含めて国家社会が全員でリスクを背負う北欧型を目指すべきである。造語だが国縁という考え方が良いのではないか。
・円高ではなくドル安になっている。基軸通貨としてのドルの地位が低下している。アメリカもそれに逆らわず、むしろドル安による輸出倍増を狙っている。TPPにより市場囲い込みをして、自国からの輸出を優位にしようとしている。
・日本は、外から見れば全体として非常にしっかりとまとまっているように見えるが、一歩中に入って部分部分に解体してみると、てんでバラバラである。解体の
・繁栄から衰退は歴史の必然である。これには絶対逆らえない。日本は老大国として成熟した国になればいい。パックスブリタニカが終わったからといってイギリスが消滅したわけではない。
・マイナス成長はまずいが、ゼロ成長やそこそこの成長でも良いではないか人間の欲望を満足させるために未来永劫右肩上がりの経済成長を目指すのは短絡思考である。
・産業の空洞化はないが雇用の空洞化は起こる。雇用・格差は大きな問題である。争奪から分かち合いの時代へ移行すべきで、ワークシェアリングを取り入れることが有効だ。欧州には成功した国があるので参考にすべきだ。
・ユニクロについては、低賃金の労働者に買える価格にするためにさらに賃下げをするという価格競争・賃下げ競争の悪循環に陥ることが大きな問題であり、ダイナミズムのみに注目して礼賛するのは間違いである。

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内容紹介
ひたすら成熟化する日本経済。GDP2位の座を中国に奪われるなど地位低下が著しいが、2人はそろって「大丈夫。まったく心配いらない」。世界はどうなり、日本はどこに活路を見いだせばよいのか。碩学と気鋭の学者が語り尽くす!

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内容(「BOOK」データベースより)
GDPの大きさなど、もはやどうでもいい。グローバル化が進む中で成熟化する初の先進国、それが日本だ。後に続く国々に「モデル」を示せるか。碩学と気鋭の教授が語り尽くす。

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