“日本を滅ぼす〈世間の良識〉” by 森巣博(講談社現代新書)

日本を滅ぼす〈世間の良識〉 (講談社現代新書)



大手メディア(マスゴミ)、官僚、政府、公益企業に対する怒りを代弁

「COURRiER Japon」誌の連載「越境者的ニッポン」を新書化したもの。オーストラリア在住の自称チューサン階級(中学3年生程度の知識の持ち主のこと)の著者が、大手メディア(マスゴミ)、官僚、政府、公益企業(東電など)に対する怒りを代弁してくれる。言葉遣いがやや下品だったり、下ネタがかったりしているが、本質を突いているので全く気にならない。
特に「利潤の私益化・費用の社会化」こそが、なぜ日本がほぼ回復不可能な財政赤字状態に陥ったのかを的確に表している。官僚や公益企業、大企業の経営層など一握りの人間どもが、国民の利益を吸い上げて私物化し、そのために掛った費用は国民のツケに回しているということだ。これは過去においてもそうであるし、現在も続けられていることだ。
「民営化」とはそれまで社会資本だったものが、一部の人たちだけの私有物とされることにほかならない。元々税金で作られたものにも関わらずである。鉄道、電話網、郵便事業などすべてが同じ構図である。
このような不公平(不正と言うべきか)なことが行われないように「権力の監視」をすることが、大手メディア(マスゴミ)などジャーナリズムの使命だが、日本のである「権力の監視」をせず、大手メディア(マスゴミ)は、お上から垂れ流されるリーク情報だけを報道する発表ジャーナリズムに終始する。その原因は野中広務が明らかにしたように、記者たちが政府からは「官房機密費」を受け取り、公益企業(東電など)からは接待漬けになっていることによる。
何がどう報道されたかも重要だが、何が報道されなかったかも重要である。昔は新聞・テレビの報道がすべてだったが、今はネットメディア、海外メディアなどから情報が得られる。大手メディア(マスゴミ)が何を報道しなかったかもすぐ分かる。それは自分たちに都合の悪いことで国民に知らせたくなかったことだと考えて間違いないのである。
著者はこの日本の状況を「おとーちゃんばかりがお饅頭を食べる思想」と表現する。また、フランツ・ファノンの「無知というのは知識がないことではない。疑問を発せられない状態を指す。」を引用して、日本国民が「世間の良識」に縛られて、疑問を発せられない状態に陥っていると言う。
大手メディア(マスゴミ)の報道によって形成される「世論」、自分たちの都合の良い「世論」を形成し自分たちの取り分を増やすことしか考えない官僚、政府、公益企業ども。結局のところ大手メディア(マスゴミ)の無責任さが最も責任が重いということではないのか!

警察の任意とは警察官の任意ではないのか
力士が大麻を吸って全員の尿検査が行われたが、押尾学、のりピー事件では芸能人全員の尿検査は行われなかった

第5章に福島原発事故に関して「承諾しがたき現実であろうとも、それが現実である限り、ひとまず承諾するしかない。」と書かれているが、同じことを小出裕章氏も「原発のウソ」で書いていた。
a little bit pregnantちょっとだけの妊娠だから大丈夫=ただちに健康に影響を与えるものではない=現時点では大丈夫だがいずれそうなる状態のこと
after me the deluge後は野となれ山となれ=すべてのツケは後から国民が払いなさい

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内容紹介
嘘つきメディア、舐めた政府、踊る国民 そろそろ現実を見ないか?
真の愛国とは、こういうことだ!
世界中の賭場を攻める博奕打ちが、迷走を続ける日本のいまを縦横無尽に斬る痛快コラム集。
「世間の良識」が国を滅ぼしかけている事実に、いまこそ刮目せよ!
The Party Is Over.
怪人モリスがこの国の”今”を一刀両断!
どうやら日本国内では、おかしなことに気づかない(あるいは、気づかないふりをしている)ほうが安全なようだ。それゆえ、おかしな部分が見えてきだすと、自動的に制御がかかる。見えているのに、見えないこととする。自衛本能による、メンタル・ブロックなのだろう。知らねば、その事象は存在しないことと同義だ。――<本文より>
無知というのは知識がないことではない。疑問を発せられない状態を指す。――(フランツ・ファノン)
勇気を持って、事実を見る――(チャールズ・ダーウィン)

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目次
第1章 この国は必ず沈没しますけど,なにか?
 利潤の私益化・費用の社会化(1)
 利潤の私益化・費用の社会化(2)
 日本沈没あとバカ理論
 論理が転倒した嫌な時代になりました
 国民が国と心中するしかないのだから

第2章 大手メディアの正体見たり
 自国メディアの不甲斐なさを他国メディアによって知る
 沈黙は「金」,ただしこれは「カネ」と読む
 こうやって国は滅びていくのだろうな

第3章 鳴呼,すばらしき世間の良識(笑)
 のりピー報道ヒステリーについて考えてみた
 再度のりピー・押尾事件について考えてみた
 「新」と「怒」という監事について,勝手に考えてみた
 史上最強となりえた横綱を殺したのは,誰か? 
 国技と文化的伝統を継承するために

第4章 日本はホントに民主国家なのでしょうか?
 神も歴史も畏れぬ不届き者たち
 任意とは,いったい誰の任意なのだろうか?(1)
 任意とは,いったい誰の任意なのだろうか?(2)
  いわゆる「北方領土」について,チューサン階級も考えた
 憂国の情,抑えがたく

第5章 被曝上等,御意見無用
 大本営原発部発表「大丈夫・心配ない・安全・ただちに健康に・・・」
 安全基準値と規制値を大幅に引き上げたので,もう安心です
 放射能みんなで浴びれば怖くない,って言われても,ちょっとねえええ・・・
 まだ誰も,塀の内側でしゃがんでいない
 胡桃の木と日本人は叩けば叩くほど収穫できる,のか?
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内容(「BOOK」データベースより)
嘘つきメディア、舐めた政府、踊る国民、そろそろ現実を見ないか?
The Party Is Over. 怪人モリスがこの国の”今”を一刀両断。

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