2011年12月アーカイブ

気にしない技術 (PHP新書)

気にしない、気負わない、まあ良いんじゃないのという「テキトー力」が大切

PHP研究所の月刊誌THE21の連載がベースになっているそうだ。1テーマが数ページ単位でまとまっており読みやすい構成になっている。
他人には「気にしない、気にしない」と言いながら、自分のことになると「気にしろ、気にしろ」と迫っている状態になりがちで、多くの場合は悪循環に陥ってしまい、なかにはうつ病になってしまう場合もあるようだ。一番良い解決法は「最初から気にしないようにすること」で、その方法をまとめたのが本書である。
ポジティブであることが良いことであって、それを要求され常に前向きで成長し続けることを由とする風潮は、いまだに高い経済成長を求められる日本経済と重なって見える。

以下気になった/気に入ったポイント。
・東日本大震災を機に日本全体、日本人全員が何らかのストレスを感じている。このような非常時や限界を示された時の決断は間違うことがある。吊り橋効果、閉店時刻効果という。
・目標は立てるべきものではなく立ててもいいものくらいに考えておけば良い。普通に生きるだけでも大変なことだ。
・計画や目標を達成できなかったことで自分を責めてはいけない。マイナスの感情のループにはまってはいけない。
・功利主義的・効率的読書=速読術は不要だ。何げなく手に取った一冊に名著があることもある。実用書と人生を豊かにする本は分けて考えたい。
・テキトーがなぜ悪い。厳格なルールは相手を信用していない証拠。その傾向を強めているのが会社という組織である。その結果うつ病、労災、パワハラなどが増えていると思われる。
・「まあいいんじゃないの」と許しあえるテキトー力を身につけたい。
・人は実生活の中では役回りにふさわしい「演技」をしている。
・駅伝人気は絆を作りたいことの象徴。成果主義などによりぎすぎすした職場になっていることの表れ。

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内容紹介
世間、流行、テレビ、職場......もう、ふりまわされたくない!
「前向きなのはとにかくいいことだ」――ポジティブ・シンキングの絶対化は、いつしか「前向きでなければいけない」という強迫観念となった。すべてにおいて「頑張らなければいけない」私たち。明るく人づきあいができなければ人格的に否定され、ツイッターや朝活、婚活ブームに乗らなければ無能と見なされる。周囲の同調圧力に耐えかねて「うつ」になったり、やる気を失くしてしまう人が増えるのも当たり前。心が悲鳴をあげている。
自分をだますのはもうよそう。世間や職場にふりまわされず、平凡な日常に幸せを感じるコツ。
目標は小さくアバウトでいい/責任感は強ければいいわけでもない/「テキトー」って、そんなに悪いことですか?/ギスギスした職場で「心を通わせる」必要はない/健康志向もいきすぎれば体に悪い/あえて情報ツールを駆使しない/焦って「絆」をつくるのはやめましょう...

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内容(「BOOK」データベースより)
「前向きなのはとにかくいいことだ」―ポジティブ・シンキングの絶対化は、いつしか「前向きでなければいけない」という強迫観念となった。すべてにおいて「頑張らなければいけない」私たち。明るく人づきあいができなければ人格的に否定され、ツイッターや朝活、婚活ブームに乗らなければ無能と見なされる。周囲の同調圧力に耐えかねて「うつ」になったり、やる気を失くしてしまう人が増えるのも当たり前。心が悲鳴をあげている。自分をだますのはもうよそう。世間や職場にふりまわされず、平凡な日常に幸せを感じるコツ。

下山の思想 (幻冬舎新書)

実りの多い豊かな「下山」とは何かを考えるきっかけとなる

著者は2008年に「林住期」という本を書いているが、本書でも今の日本は、この古代インドの人生を「学生期(がくしょうき)」「家住期(かじゅうき)」「林住期(りんじゅうき)」「遊行期(ゆぎょうき)」に分ける思想の中の「林住期」にあたると言っている。人生ではなく山登りを例に取れば、前半が「登山」であり後半が「下山」ということになる。国や世界も同様で、成長期としての登山があれば必ず成熟期以降としての下山がある。登山をすれば必ず下山しなければならないのに、これまで下山が深く考慮されたことはない。登山以上に重要なものにもかかわらずだ。
日本は戦後著しい経済成長を遂げて世界第二の経済大国になった。これは成長期、すなわち「登山」であるが、すでに経済成長のピークは過ぎ成熟期すなわち「下山」のプロセスに入っているのである。「下る」という言葉にはネガティブなイメージがつきまとうが、下山はそういうことではなく、実りの多い豊かな下山を続けるということである。そして更なる再出発のための準備を整える時期である。日本にとって実りの多い豊かな「下山」とは何か、新たな目標とすべき国はどのようなものかをを考えるきっかけとなる。
また、日本は東日本大震災と原発事故に見舞われたが、下山の途中に雪崩に遭ったようなものだ。これからも立ち上がらなければならないが、目指すものはかっての経済大国ではないはずだ。このようにかつての経済成長を目指すべきではないとい主張は他書(「成熟ニッポン、もう経済成長はいらない」など)にも多く見られ賛同できるものだ。
「おわりに」には、必ずしも暗い気持ちで下山の時代を見ているわけではなく、むしろ必死で登山をしているときよりも、はるかに軽い気持ちで下山について語っているつもりだ。伸びやかに明るく下山していくというのがいつわらざる気持ちだと書かれている。
ただし、最終章「ノスタルジーのすすめ」はページを埋めるために無理矢理追加されたような内容で違和感がある。

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内容(「BOOK」データベースより)
どんなに深い絶望からも人は起ちあがらざるを得ない。すでに半世紀も前に、海も空も大地も農薬と核に汚染され、それでも草木は根づき私たちは生きてきた。しかし、と著者はここで問う。再生の目標はどこにあるのか。再び世界の経済大国をめざす道はない。敗戦から見事に登頂を果たした今こそ、実り多き「下山」を思い描くべきではないか、と。「下山」とは諦めの行動でなく新たな山頂に登る前のプロセスだ、という鮮烈な世界観が展望なき現在に光を当てる。成長神話の呪縛を捨て、人間と国の新たな姿を示す画期的思想。

ガリレオの苦悩 (文春文庫)


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内容(「BOOK」データベースより)
"悪魔の手"と名のる人物から、警視庁に送りつけられた怪文書。そこには、連続殺人の犯行予告と、帝都大学准教授・湯川学を名指して挑発する文面が記されていた。湯川を標的とする犯人の狙いは何か?常識を超えた恐るべき殺人方法とは?邪悪な犯罪者と天才物理学者の対決を圧倒的スケールで描く、大人気シリーズ第四弾。

日本中枢の崩壊


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内容説明
経産省の現役幹部が実名で告発!!
「日本の裏支配者が誰か教えよう」
福島原発メルトダウンは必然だった......
政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!? 家族の生命を守るため、全日本人必読の書
経済産業省大臣官房付 古賀茂明。
民主党政権と霞ヶ関がもっとも恐れる大物官僚が、ついに全てを語る!
日本中枢が崩壊してゆく現状を、全て白日の下に!
・巻末に経産省が握りつぶした「東電処理策」を掲載
発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚もいた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるところだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)
改革が遅れ、経済成長を促す施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議院議員選挙がある二〇一三年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)
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内容(「BOOK」データベースより)
福島原発メルトダウンは必然だった...政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹部が実名で証言。


予想外の結末、しかしイマイチ感が残る

「アンフェア」シリーズ原作者による書下ろしの医療ミステリー。「インシデント」とは医療事故のことだ。
書評とはいえ、ミステリーの種明かしを書くわけにはいかないが、予想外の結末だった。医療事故ではなかったということ。女子高生のさやかも同級生の悠も死んでしまったということ。
また、期待しすぎたのかもしれないが、ちょっとイマイチ感が残った。あまり深く考えずに、ミステリー小説として楽しんだ方が良いのだろうか。

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内容説明
「アンフェア」著者が贈る医療ミステリー 脳外科医の桧山冬実は、世界初となる脳幹部海綿状血管腫の手術に挑むが......。「アンフェア」シリーズ著者が贈る緊迫の医療ミステリー。

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内容(「BOOK」データベースより)
女子高生のさやかは、脳機能iPS細胞再生術を用いた世界初の脳外科手術を受ける。執刀医は、日本随一のオペ技術を持つ天才女医・檜山冬実。しかし、誰もが手術の成功を確信する中、悲劇は起きた。それは医療事故だったのか、それとも罠なのか。現代医療の矛盾に迫る緊迫の医療ミステリー。文庫書下ろし。



成熟ニッポン、そんなに成長して何になる

「せまい日本そんなに急いでどこに行く」の書き出しから始まる本書は、言わば「成熟ニッポン、そんなに成長して何になる」についての対談録だ。

本書の主旨は、日本はこれ以上生活水準をあげる必要はなく、優雅なる老衰国(大人の生き方)のモデルを示すべきだということだ。
この主旨には大いに賛同するが、現に顕在している雇用の空洞化や格差拡大の問題は早急に解決すべき課題である。

以下は要点のまとめ。
・かつては、経済成長によりキャッシュを稼ぐことが必須だったが、今の日本は潤沢なストック(社会インフラ、貯蓄など)が整った成熟債権大国になっている。成熟段階を迎えているのに、いまだに成長戦略しかたてられない、成長しないと不安になるというミスマッチ状態が問題である。
・昔の日本は1億総中流と言われるほど格差が小さく、普通の一般のレベルが非常に高い社会だったが、アメリカ化によって格差社会になってきた。また、有縁社会(血縁地縁社縁)から無縁社会に移りつつある。
・個人主義の台頭は社会的成熟度の高まりという側面もあるが、社会保障も含めて国家社会が全員でリスクを背負う北欧型を目指すべきである。造語だが国縁という考え方が良いのではないか。
・円高ではなくドル安になっている。基軸通貨としてのドルの地位が低下している。アメリカもそれに逆らわず、むしろドル安による輸出倍増を狙っている。TPPにより市場囲い込みをして、自国からの輸出を優位にしようとしている。
・日本は、外から見れば全体として非常にしっかりとまとまっているように見えるが、一歩中に入って部分部分に解体してみると、てんでバラバラである。解体の
・繁栄から衰退は歴史の必然である。これには絶対逆らえない。日本は老大国として成熟した国になればいい。パックスブリタニカが終わったからといってイギリスが消滅したわけではない。
・マイナス成長はまずいが、ゼロ成長やそこそこの成長でも良いではないか人間の欲望を満足させるために未来永劫右肩上がりの経済成長を目指すのは短絡思考である。
・産業の空洞化はないが雇用の空洞化は起こる。雇用・格差は大きな問題である。争奪から分かち合いの時代へ移行すべきで、ワークシェアリングを取り入れることが有効だ。欧州には成功した国があるので参考にすべきだ。
・ユニクロについては、低賃金の労働者に買える価格にするためにさらに賃下げをするという価格競争・賃下げ競争の悪循環に陥ることが大きな問題であり、ダイナミズムのみに注目して礼賛するのは間違いである。

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内容紹介
ひたすら成熟化する日本経済。GDP2位の座を中国に奪われるなど地位低下が著しいが、2人はそろって「大丈夫。まったく心配いらない」。世界はどうなり、日本はどこに活路を見いだせばよいのか。碩学と気鋭の学者が語り尽くす!

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内容(「BOOK」データベースより)
GDPの大きさなど、もはやどうでもいい。グローバル化が進む中で成熟化する初の先進国、それが日本だ。後に続く国々に「モデル」を示せるか。碩学と気鋭の教授が語り尽くす。

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