誰が小沢一郎を殺すのか?画策者なき陰謀
検察やメディアの行動を免疫機能に例えているところが秀逸だ
著者は30年以上に亘って日本政治を取材し続けてきたオランダ人ジャーナリストだ。
本書は小沢氏を盲目的に擁護しようとするものではない。現在日本で小沢氏に対して行われている「人物破壊」というキャンペーンを題材として、非公式に日本の政治システムを牛耳っている官僚機構(特に検察)について述べたものである。また、日本とアメリカとの関係については、日本がアメリカの「保護国」を脱して真に独立した民主国家となることを願い、その役割を担うのは小沢氏しかいないということを言いたいものである。
まず、小沢氏を排除しようと画策している非公式かつ超法規的な政治システムを人間の免疫機能に例えているところが秀逸だ。自分たちの作り上げた社会秩序を変える可能性の高い政治的実力者(異物)を排除しようという力が自動的に働いているという。非公式かつ超法規的な政治システムとは明治維新のリーダーによってつくられた官僚機構であって、国民に真実を知らせることは「秩序を乱す」ことであり、権力者たる自分たちが正しく導かなければならないと信じているのだ。
一般の国民は、直接的に政治を知ることはできないため、メディアが生み出す「政治的現実」(政治に関わる人々の総体がなす行動、相互作用)を通じて知ることになる。本来ジャーナリストによる多様な解釈が提供され、いろんな情報を国民が得ることができるのが当然なのに、日本のメディアの解釈は画一的でその結果としての報道内容も横並びで同じである。誰に命じられているわけでもないのに同じになってしまうことが問題だ。結果として一般国民は、その画一的なメディアの報道を「政治的現実」と捉えてしまうのだ。
今も検察やメディアによる小沢氏に対する「人物破壊キャンペーン」が行われているが、これがまさに免疫機能による「画策者なき陰謀」である。彼らは日本の秩序(旧来の体制、55年体制、アメリカ従属)を守るのが使命だと信じており、間違ったことをしているなどとは考えていない。恐ろしいことである。
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内容
永田町取材30年以上のオランダ人ジャーナリストが、「小沢一郎」問題の背後に浮かび上がる「非公式権力」と、その支配の構図を徹底解明。
検察とマスコミによる「異分子」の抹殺、民主主義を揺るがす「日本型スキャンダル」の罪、そして小沢一郎問題と戦後日米関係を結びつける「密約」の正体とは――。日本の未来を問い直す刺激的論考、騒乱の渦中に緊急出版!
「明治期に形成された〈官僚〉中心の日本政治のシステムが、いかにして〈検察〉と〈マスコミ〉によって守護され、その敵となる異分子を排除してきたのか――小沢問題の核心はここにある。」
30年以上に渡って日本政治を取材し続けてきたオランダ人ジャーナリスト、カレル・ヴァン・ウォルフレンが、明治時代から連綿と続く日本の「政治システム」の闇を歴史的・包括的に分析し、霞ヶ関とマスメディアが守りぬく「非公式権力」に鋭く切り込む。
「政治家・小沢一郎」はなぜ摘発されたのか?その背景を明かす衝撃の「日本政治」論。小沢一郎強制起訴の渦中に緊急出版決定!
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著者について
アムステルダム大学教授、ジャーナリスト。 1941年、オランダ・ロッテルダム生まれ。
30年以上にわたって日本の権力構造をめぐる取材・分析をおこない、日本と欧州を行き来しながら先鋭的な批評活動を展開してきた。
72年よりオランダ「NRCハンデルスブラッド」紙の東アジア特派員、82年より日本外国特派員協会会長を務め、「フォーリン・ア フェアーズ」「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」などに寄稿している。
世界的なベストセラーとなった『日本/権力構造の謎』(早川書房)、『人間を幸福にしない日本というシステム』(毎日新聞社/新潮社)のほか、近刊に『アメリカとともに沈みゆく自由世界』(徳間書店)がある。