"不毛地帯(第1~5巻)" by 山崎豊子(新潮文庫)

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不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))

 

唐沢寿明主演でTVドラマ化され話題になっていたため読んだのだが、分厚い文庫本5冊だったので非常に読み応えがあった。山崎豊子の小説を読むのは、昨年末に読んだ沈まぬ太陽に続いて2作目だ。 小説とは言っても、実在のモデルとなる人物、会社、政治家、官僚などがいる話なので、当時の日本国内、日米間の状況が思い出される。
あとがきにも作者自身の言葉として取材が非常に大変だったと書かれていたが、全くその通りだったのではないかと思われる。シベリア抑留の状況など思い出したくないという人も多かっただろうし、当時のソ連との関係などから露骨に書きにくいこともあったのではないか。それにもまして政治家への金銭提供、便宜供与なども出てくるので都合が悪い人からの圧力などなかったのだろうかと余計な心配をしてしまった。

<第1巻> 拷問、飢餓、強制労働――地獄のシベリアから生還した男。商社マンの孤独な戦いを通じて戦後史を活写する記念碑的長編。大本営参謀・壹岐正は、終戦工作に赴いた満州でソ連軍に抑留される。酷寒のシベリアで、想像を絶する飢餓と強制労働に11年にわたって耐え抜き、ついに昭和 31年、帰還を果たした。その経歴に目を付けた近畿商事の社長大門の熱心な誘いに応え、第二の人生を商社マンとして歩むことを決意。地獄の抑留生活の傷も癒えぬまま、再び「商戦」という名の新たな戦いに身を投じる。
【目次】 一章 出会い/二章 壊滅/三章 社長室/四章 シベリア/五章 運命/六章 濁流/七章 戦犯/八章 地の果て/九章 門出/十章 祖国へ/十一章 再出発 十二章 春雷
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<第2巻> 政界、防衛庁を巻き込んだ苛烈なる「黒い商戦」。国益と政争の間で揺れ動く次期戦闘機選定の行方は――。 商社マンとして生き抜くことを宿命と感じるようになった壹岐は、防衛庁の次期戦闘機選定に伴う商社、メーカーの熾烈な受注合戦に巻き込まれる。国防のため、真に優れた機を採用させようと奔走するが、背後には次期総裁選をめぐる暗闘が横たわっていた。壹岐は政界や防衛庁内の利害が複雑に絡み合う「黒い商戦」で水際立った手腕を発揮する。しかし、その代償もまた大きかった。
【目次】 十三章 アメリカ/十四章 風雲/十五章 二つの翼/十六章 怪鳥/十七章 新生/十八章 スエズ運河
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<第3巻> 虎視眈々と日本を窺う米巨大自動車企業。提携相手はどちらの社か――容赦なき国際経済戦争の現実。 次期戦闘機商戦に勝利し、中東戦争をめぐる商機を掴んで利益を挙げた壹岐は、社の経営方針転換を提唱。経営不振の千代田自動車への関与を深めようとした矢先、米巨大自動車企業フォークの社長が突如来日する。虎視眈々と日本市場を窺うフォーク社に対し、壹岐はアメリカ近畿商事の社長となって千代田自動車との提携交渉を進めるが......。国際経済戦争の過酷な現実に壹岐は苦悩する。
【目次】 十九章 陽炎/二十章 波紋/二十一章 月光/二十二章 ニューヨーク/二十三章 試走/二十四章 炎
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<第4巻> 専務への昇進、油田開発。宿敵との果てしなき戦い。腹心の部下は中東へ。米企業との交渉も大詰めを迎えるが――。フォーク社との虚々実々の交渉の裏で、壹岐は資源に乏しい日本の将来を見据え、原油確保の手段を模索していた。腹心の部下・兵頭はイランやリビアに飛び、文化や商習慣の違いに悩まされながら油田開発の可能性を探る。一方、フォーク社との交渉は最終段階に至って、ライバル東京商事の暗躍で思いもかけない展開に......。専務に昇進し、近畿商事ナンバー3となった壹岐の戦いは続く。
【目次】 二十五章 暁暗/二十六章 インシャ・アッラー/二十七章 ナンバー・3/二十八章 熱砂/二十九章 その日
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<第5巻> これが商社マンとしての最後の仕事だ――。乾坤一擲のイラン油田への賭け。シベリアに始まる長い戦いも終幕へ。 油田開発を商社マンとしての最後の仕事と思い定めた壹岐は、社内の反対を押し切り、イランのサルベスタン鉱区に賭けた。政官界からの逆風をかわし見事採掘権の落札に成功するが、灼熱の大地からは一向に原油の噴き出す兆しはなかった......。シベリアと中東、二つの「不毛地帯」を彷徨する一人の日本人の戦いを、戦後史を背景に圧倒的な筆致で描ききった一大巨編、ここに完結。
【目次】 三十章 イランの賭け/三十一章 油兆なし/三十二章 天声/終章 極光

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このページは、yafoが2010年2月 6日 10:33に書いたブログ記事です。

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