"記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争" by 上杉隆(小学館101新書)

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記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争 (小学館101新書)


別のレビューで、最近「○○崩壊」という言葉をよく見聞きすると書いたが、この「記者クラブ崩壊」は国民にとって歓迎すべきことだ。
著者上杉隆氏は前著「ジャーナリズム崩壊」から一貫して「記者会見のオープン化」を訴え続けている。つまり記者クラブが主要新聞・TV・通信社のみの閉鎖組織のため、すべての情報が国民に伝わっていないということだ。以前の私にとっては、全くそのようなことは思いもよらぬことで、新聞報道やTV報道を信じ切っていたのだが、今は懐疑的に受け止めるようになった。確かに各誌、各チャンネルが横並びで同じ内容の報道ばかりしている。特に民主党政権になってからはさらにひどくなってきているようだ。
エピローグによれば、新聞労連新聞研究部は記者会見の全面開放に向け努力することを宣言したとのこと。また、文末には毎日新聞、東京新聞、フジテレビ、テレビ朝日などは記者会見のオープン化に賛成というアンケートも掲載されている。「記者クラブ崩壊」ではなく「記者会見のオープン化」が実現する日も近いのかもしれない。
しかしながら、前著もそうなのだが、著者のヒーロー気取りな書きっぷりが非常に気になる。プロローグの中に「筆者の望まない戦いは日に日に激しさを増している。」や「(筆者への)弾圧は高まっている。その圧力は最高潮に達している。」など具体性に欠ける表現があり、本書全体を通じて自身を主人公として記述していることが、違和感のもとだと感じる。私はジャーナリズムなど詳しくはないが、客観性や中立性が保たれているのかが疑問に感じる。

記者クラブの経緯
1890年
「議会出入り記者団」として発足
1930年代後半
政府の言論統制が厳しくなり、その傘下に入った
1949年日本新聞協会の方針
記者クラブは各公的機関に配属された記者の有志が相集まり、親睦社交を目的として組織するものとし、取材上の問題には一切関与せぬこととする
1978年日本新聞協会の見解
記者クラブの目的はこれを構成する記者が、日常の取材活動を通じて相互の啓発と親睦をはかることにある

記者会見のオープン化の動き
金融庁、亀井大臣
 前半を記者クラブ相手、後半を大臣室でそれ以外相手に行った、
内閣、平野官房長官
 記者会見開放の公約が守られていない
 
外務省、岡田大臣
 記者会見を全面開放済み
 閣議後のぶら下がり会見を実質拒否
環境省、小沢大臣
 1日2度会見を行う見込み

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内容説明
官僚に操られる新聞・テレビは死んだ!
新聞・テレビが、国民から「知る権利」を奪っている。官僚による情報操作、各社横並びの報道談合、海外メディアの日本撤退、すべての根源は「記者クラブ」だった!
鳩山政権公約「記者会見オープン化」に抵抗する記者クラブと、筆者は戦ってきた。その200日間の軌跡を通じて、官僚と大マスコミが一体化した「官報複合体」の正体を明らかにし、世論を喚起する1冊。
「記者会見オープン化」に反対する新聞・テレビはいったい誰の味方なのか。現役大臣も外国人記者も激怒した記者クラブの実態とは?国民から知る権利を奪う「官報複合体」の正体を明らかにし、世論を喚起する一冊。
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目次
プロローグ
第1章 記者クラブの抵抗<2009年9月~12月>
 新聞・テレビは一体誰の味方なのか
 記者クラブこそ日本最大の抵抗勢力だ(×井沢元彦)
 国民から知る権利を奪う「報道自主規制」という悪弊
 記者クラブを放置すれば日本は海外メディアから捨てられる
 国民が知らない記者クラブとの「100日戦争」(×亀井静香)
第2章 官僚との癒着<2010年1月~3月>
 記者クラブとの壁を軽々と越えてしまったツイッターの衝撃
 冤罪・国策捜査の片棒を担ぐ「司法記者クラブ」の大罪
 記者クラブへの年間13億円超「公費支出」を事業仕分けせよ
 記者クラブ制度批判に徹底反論する (×花岡信昭)
第3章 裏切りの官邸<政権発足前夜>
 ドキュメント・裏切りの首相官邸
エピローグ

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このページは、yafoが2010年4月 7日 22:44に書いたブログ記事です。

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